あなたの会社はブラックかもしれない

中小企業経営者の皆様は人の問題について日頃から頭を悩まされていることかと思います。特に製造現場での人で不足は深刻で、そのために倒産してしまう企業も出てきています。採用から始まり、その後の定着、仕事ぶりなどできる限りのことはしているのに上手くいっていないという声を多く聞きます。また、すべてをいわゆるホワイト企業のような基準にもっていこうとしても業務の内容、業績、会社の体力などからできないことはあり、その場合、従業員に我慢してもらうこともでてきます。

 

そこで口の悪い従業員はいいます。

「うちの会社はブラックだ」と。

 

経営者からすると、うちはほかの会社と比べると待遇もよく、これで満足しない従業員はおかしい。よく聞く言葉です。

 

わたしが経営していた会社もどちらかといえば給料は決して多くはなかったですが、残業代も満額支給し、休日も休日出勤をすれば手当を支給し、全額会社持ちの慰安旅行などとできる限りのことはしてきたつもりではありましたが、従業員のパフォーマンス、モチベーションは一向に上がりませんでした。

 

では、なぜここまでしているのにパフォーマンス、モチベーションは上がらないのでしょう?

 

ここで理解していただきたいのは、できる限りのことはしているということは、あくまで経営者(会社)側での立場からであって、人から見た基準ではなく自分基準であるということです。評価というものは受けとる(社員)側の感じ方が基準なのです。受け取る側が評価していないのであれば、経営者側がこれだけのことはしているといくら言っても意味がないのです。

 

従業員は経営者の考えを慮らないのです。

 

実は、できる限りのことをして待遇しているというのは、自身の労働に対する対価なのでよほどの好待遇でない限り、特別なことではなく、従業員にとっては基本的な価値であり、悪く言えば当たり前のことなのです。これができていないと働く意欲は上がるどころか逆にモチベーションはさがります。

 

では何をすればよいのかというと情緒的な価値の向上を目指すのです。

 

なぜ従業員は今の仕事を続けていくのかといいますと、①給料が高い、休みが多い、役職が高いなどの待遇面的な側面と②やりがい、自分自身の成長、キャリアアップなどの自己実現的な側面があります。①はいわゆる基本的価値、②は情緒的価値と言い換えることもできるでしょう。

 

②の側面が大きくなっていくにつれて、①の側面は相対的に小さくなっていき(図参照)、たとえ給料がそれほど高くないだとか、休日が少ないだとかがあったとしても、能動的、主体的に仕事に取り組むという状態が実現されます。こうなると、他社との比較や同業界での基準といったものに囚われずとも高いパフォーマンスが期待できます。逆に基本的価値のほうが大きい状態では、前述の労使ともにすれ違った状態となり、高いパフォーマンスは期待できません。労働に見合ったもしくは妥協できる待遇で有れば仕事は続けていくだけという状態です。

 

受け取る側の状態でブラックにもなればホワイトにもなるのです。

 

②の側面を大きくするには、受け入れられている、必要とされている、認められていると感じてもらうことが大事で、そのためには対話を通して根気強く目指している方向や意図していることを従業員に理解してもらい、ベクトルを同じ方向に向ける努力を続けなければなりませんし、もちろん正当な評価、できるかぎりの待遇の改善も必要です。

 

 

ただ、人によっては基本的価値の基準が異常に高かったり、どう動機付けしても情緒的価値の欲求が少ない方がいらっしゃいます。会社の方向性のマイナスに向かないのであれば、もちろん雇用し続けていただきたいのですが、マイナスに向いている方に対しては、苦しい決断をしなければならい時もあります